誓い



ⅰ.運命論

 運命とは実に皮肉なものだ。
 人生の過去から未来まで、全てを運命と呼んだとしても、決して定められたものではない。
 にも関わらず、選択の余地がない事態が存在する。
 人はそれを皮肉って、運命又は宿命などと呼ぶのだろう。
 諦めて受け入れるために。

「運命論」孤高の王 サラスバティ

 

†  †  †

 

 二人で旅立って三年、何の前触れもなしにロックは言った。
「俺、もうすぐ30だろ? 形に拘るつもりはないけど、これからずっとお前と過ごすのにさ、一応のけじめは付けようかと思ってるんだ」
 唐突すぎて、セリスがきょとんとして、「え?」と問い返すと、
「いや、何でもね。今度の遺跡から戻ったら、改めて言う」
 照れたように彼ははにかんだ。
 先週、出発前日のことだった。
 あれは……プロポーズ予告なのだろうか?
 ロックと結婚。もしできるのであれば、夢のようだとセリスは思う。平凡な幸せなど自分には望むべくもないものだと思っていたから。
 旅から戻ったら正式に申し込んでくれるのだろうか? 彼は何て言うのだろう?
 想像して一人幸せにひたっていた。彼が早く戻らないかと心浮かれて。


 セリスはモブリズに滞在している。ケフカを倒した後体調を崩しがちになり、初めはコーリンゲンを拠点にし、調子のいい時はセリスも共に旅をしていたのだが、一人では何かあった時に心配だとロックが言うので今はモブリズでティナを手伝っている。
 各地から孤児が集まり拡大した孤児院はにぎやかだ。幸い大人達も増えている。家族を失った女や子供のいない夫婦などが集まってきていた。
 正直、初めはセリスが子供が苦手だった。昔のティナではないが、どう接すればいいかまるでわからなかったのだ。
 しかし戸惑いながらも話しかけたりしているうちに打ち解け、今では子供達をとても可愛いと思う。そして子供達と接しているうちに浮かぶようになったのは「いつか、ロックの子を産みたい」。それも当然の想いだろう。家族を持ったことのないセリスにとって血の繋がった我が子ができるというのは夢であり憧れだ。
 しかし、因果応報なのか、運命とは皮肉なもので……。
「大丈夫?」
 ベッドの中で青い顔でうなっているセリスを、ティナが覗き込んだ。
「だめ。痛い」
 うんざりしたような顔で告げる。単なる生理痛だが、立ち上がれずにのたうち回るほどひどい。
「毎月これはひどいわね」
 薬師チャーリーの妻で看護婦のスヴェラが溜息をついた。調合した薬草も気休めにしかならない。吐き気はおさまるが、痛みは引いてはくれなかった。
「昔から?」
 スヴェラに聞かれ、ティナは、
「どうだったっけ?」
 共に戦った日々を振り返って首を傾げる。
「う~ん。前はそれどころじゃなかったし、痛かったけど我慢してたから……」
 セリスが呟くと、
「今は我慢する必要もなくなったしね。気が抜けたからかな」
 ティナが頷いた。スヴェラは冴えない表情で、
「ねえ、セリス。一度ちゃんとお医者様に見てもらった方がいいわ」
 そう告げた。
「え?」
 セリスがきょとんとすると、
「子宮内膜症とかかもしれないし……。私も病気で子供を産めなくなってしまったから」
 スヴェラにそう言われると、セリスは急に不安になってきた。
「来週になったらベクタに行ってらっしゃい。私の知り合いのお医者様を紹介してあげるから」
 スヴェラの言葉に、セリスは心細そうに頷いた。

 

†  †  †

 

「君……麻薬か何かやってたかね?」
 スヴェラが紹介してくれた老医師の言葉に、セリスは変な顔をした。
「は? 麻薬!?」
「ああ。又は麻薬を使った薬、痛み止めなどを常用したことは?」
 真面目な顔で問われて、セリスは記憶を巡らせる。
「帝国の軍にいた頃……魔力の拒否反応を沈める薬とか、戦場で緊張しない薬とか、色々投与された気がします。でも、種類とかは分かりません」
 不安そうに答えたセリスを見て、老医師はギョッとした顔をしていた。
「セリス・シェールとはどこかで聞いたことがあると想ったが……。あんたが常勝将軍と呼ばれていたのか? もしかして」
「はあ……」
 セリスは困ったように頷く。悪名高かったため、いくらベクタとはいえ、触れ回りたいことではない。
「こんな可愛らしいお嬢さんだったとは……。では何の薬を受けたかはわからないんだな?」
「すみません」
「いや、それは仕方がないが、何らかの麻薬の類が身体を蝕んでいる。特にホルモン系に異常をきたしていて、子宮や卵巣の正常な機能を奪っているようだ」
 呆然とそれを聞いていたセリスは、青ざめた顔で「それって……」先を促した。
「おそらく子供を作ることはできないだろう」
 考えたこともなかったような事実に、セリスは込み上げるものを必死に堪えた。
 昔は子供を作りたいと考えるようになることすら想像がつかなかったけれど、一度希望を抱いてしまった今、それがうち砕かれたのはショックだ。
「子供を作り育てることが人生の全てじゃない。わかるね?」
 優しい口調で肩を叩かれ、セリスは涙を拭いて頷いた。
「少し薬を出しておくから、生理痛は和らぐようになるだろう。調合を書いて渡すから、チャーリーにやってもらうといい」
「はい」
 セリスは丁重に礼を言って、宿へ戻った。


 “子供のできない身体”その事実は、セリスには余りにも重かった。
 スヴェラとチャーリーの夫婦も子供がきないが、あの二人は全くそれを気にしていない。代わりにとモブリズへやって来て孤児を可愛がっている。あんな風になれたらいいけど……。
 結局、将軍時代の業からは逃れられないのだと気付かされる。罪は決して消えないから逃れたいと思うこと自体間違いなのかもしれないけれど……。わかっていても、ロックと共に新しい人生を歩みたいと思ってしまった。
 ロックは何て言うだろう? 彼は子供好きだ。セリスよりよっぽど子供のことをわかっている。子供と同じ目線に立って考えられる人だ。
 彼の家は代々がトレジャーハンターだから、
「子供も孫もトレジャーハンターにする!」
 そう豪語していた。知ったら落胆するだろう。
 それで結婚をやめようとは思わないだろうが、不安だった。
 妥協してセリスと一緒になっても、健康で素敵な女性ともし浮気でもして子供ができてら捨てられるのはセリスだ。
 その発想はロックを信じていないことになるが、そうではない。今の彼の気持ちを疑ったことはなかった。ただ未来までは信じられなかった。自分に自信がないから。10年先、20年先、彼が自分だけを見ていてくれると、自分の隣にいてくれると思えない。
 子供がいたなら別だろう。現に昨日まではそんなことを考えなかった。子供でロックを引き留めようと考えていた自分の浅ましさに気付き、セリスは顔を歪めた。
 更に、全てを自分以外のせいにしようとしている。だけどその思いは拭えなかった。
 物心付いたら魔導研究所にいた。何もわからないまま魔力を注入され、気付くと将軍にまでなっていた。
 どこで何をすればこんな想いをせずに済んだんだろう? 今までのどんな時より強く思ってしまう。たくさんの人を殺してしまったことを後悔した時よりも……。自分のことだからだ。それがまた心苦しい。
 一つ言えるのは、考えても答えなどないということだ。他にどうにもできなかったのだから。
 定まっていたなどと、決まっていたなどと思いたくない。
 それでも選択肢はゼロだった。死か流されるかの2つだった。本当はあの時だって、全てを諦めて死を選んだのだ。でもロックに出会ってしまった。あの時から自分は変わっていないのかも知れない。根本的な所で変わっていない。
 持っていないものを望むのは愚かだけれど……望まずにはいられないのだ。普通の人と何ら変わらぬ幸せを───。

 

†  †  †

 

 モブリズへ戻ったセリスは、診断結果を将軍時代に投与された薬のせいだと言った。しかし不妊であることは言えなかった。なんて言えばいいかわからなかったのだ。
 スヴェラは気持ちをわかってくれるかもしれない。だけど、全く同じではないのだ。勿論、違う人間であるのだから全てを共感できる者は存在しない。が、セリスはその罪故だ。多くの命を奪ってきたから自業自得と思っている。そんなことないと言われるだろう。そう言われるのが嫌だったのだ。誰が慰めても自分の罪は消えることなく変わらないのだから。
 そして自分の問題だと思っている。
 正直にロックに言うつもりだ。そして二人で考えていくつもりだ。きっと支えてくれるだろう。大丈夫。セリスは毎日自分に言い聞かせた。
 ロックが戻る予定の日まで、あと、1週間。
 待ち遠しかった彼の帰りが、憂鬱なものになっていた。

 

■あとがき■

 10101hit! hikariさんのキリリク『ロクセリ結婚式』です。
 hikariさんご懐妊なのに、セリスは子供ができない……すみません。なんか変な話で。しかも、セリスが悩んでロックが受け止めるパターンが私の小説の定番になってしまってますね。でも、やっぱり苦難を乗り越えた後の幸せがいいかと思いまして……(言い訳です)。
 4話か5話の予定です。このクリップアートすっごく気に入ってるの。結婚式っぽくて、イメージぴったりなので。
二人の素敵な結婚式に辿り着くまでを、見守ってやってください。 (03.10.19)
 誤字脱字修正、文章補正を行いました。 (05.10.02)

ⅱ.理想論

 人の持つ理想とは千差万別だ。しかし共通して言えることがある。
 理想とは努力なしには現実に成り得ないということだ。
 わかっていながらも、時たま人は勘違いをする。
 理想とは望むだけで手に入るものだと───
 そして時折、他人に押しつける。
 理想とは個人の抱くものであり、実現するために人に強要することは真の理想を遠ざけることになる。
 理想像は明確であればあるほど、他人とは共有できない。

「理想論」孤高の王 サラスバティ

 

†  †  †

 

 サマサの南東にある小島には不思議な空間がある。
 “ゾーンイーター”と呼ばれる魔物に吸い込まれることで侵入できたそのトラップばかりの洞窟は、魔力がなくなり魔物のいなくなった現在では、入り口は閉ざされたものと誰もが思い込んでいた。
 しかしロックは、その侵入方法を見つけたのだ。
 島の東の海岸に存在する岩場の水深5mの海底付近に横穴がある。そこを泳ぐこと2分、空気の存在する洞窟内に出るのだ。
 付近の潮の流れは緩やかだが、何度も溺れるかと思った。道具が水に濡れる心配もある。
 しかし『困難』とは、トレジャーハンターとしての『やり甲斐』と同意語であり、腕が鳴るというものだ。
 入念に準備を重ね、ロックは一人海へと入った。
 専門にやっているわけではないから5mの潜水は決して楽ではない。横穴に入ってからは、ひたすら足を動かし天井部分に手を置いて進む。それが途切れると空気がある。海水から顔を出し、肩で息をしながら呼吸を整えた。
 岸に上がり荷物を下ろす。真っ暗闇だが恐くはない。夜目が利くと言えるほどではないが慣れていた。
 防水処理をほどこしておいた荷物をチェックし、カンテラに火をつける。閉鎖された空間では松明より煙の少ないカンテラ方がいい。どの荷物も微塵も浸水していなかった。それについては少し不安だったのでホッとする。
 カンテラの火がゆらりと揺れた。空気は動いているから窒息する心配はなさそうだ。空気穴があるのかもしれない。
 スパッツタイプの水着を脱いで身体を拭き服を着ると、まず周囲を確認する。特に変わったところはない。
 洞窟はロックのいる海へと繋がる場所から真っ直ぐに右に伸びていた。濡れた頭を振って、バンダナを巻いたロックは、
「おしっ、行くか!」
 気合いを入れて歩き出した。

 今回のトレジャーハントから帰ったら、セリスにプロポーズするつもりだ。
 当然だが、いつもと気合いが違う。
 OKしてくれると思っているが、それでもやはり緊張するし、いい加減なプロポーズにはしたくない。
 三角島のダンジョンは一部では伝説である。しかし実在するかわからないものとして語り継がれていた。
 トレジャーハンターの誰が魔物に吸い込まれて入る方法になど気付くだろう? 海の中から侵入できるのだって、もしかしたら世界崩壊前は不可能だったかもしれない。
 とにかく、その地下深くには伝説の剣フラタニティが眠ると言われている。様々な噂がされているが、二対の守護剣らしい。それをセリスに捧げたいのだ。
 彼女は今でも剣を離さない。いつ何があってもいいように、体調がいい時は鍛錬を欠かさないことを知っている。それを尊重した上で、彼女が攻めのために剣を振るう必要がないよう、護りの剣を与えたいのだ。彼女が持っているラグナロクは攻撃のための剣だ。いや、攻撃のためでない剣など存在しない。それを敢えて、守護剣と呼ばれるフラタニティを証しとしたい。二対のうちの一つはロックが持ち、彼女に剣の証を立てたかった。彼女の幸せにし、護り続けると。
 エドガーに負けない気障(きざ)かもしれない。いや、本気な分、多少照れはあるが、どうしても実行したかった。セリスが喜んでくれると信じて疑わなかったから。

 少し歩くと、真っ直ぐだった道は曲がりくねり、そして突然広い場所へ出た。高い岩壁に挟まれた谷底だ。
 左回りにくまなく調べて回る。魔物が存在しないのは幸いだ。トラップにだけ注意すればいい。
 ゴゴにこの洞窟のことを尋ねたことがあるが、「地下層まではわからない」と言われた。彼はここでどうやって食事をしていたのか、番人はゴーレムみたいなものなのか、など疑問はあるが、ゴーレムみたいなものだとしたら、魔力のなくなった現在は動いていないのかもしれない。ケフカを倒した後、シャドウと同じく気付いたら姿を消していた。一体、どうしているのかとたまに思い出す。もしかしたらこの洞窟に戻っているのかもしれないとも思うが、ロックがいるのは谷底では会いようもなかった。
 3/4周歩いたところで地面に開く穴を見つけた。1mほどの縦穴だ。中は真っ暗。ちょっとカンテラで照らしてみると、穴はそのまま垂直に続き、最奥は開けているようだ。
 とりあえず、一度ロープを垂らして引き上げる。垂らしたロープは下の地面に着いたような感触があった。ロープの先端には何も付着していない。ここと同じような地面と思って差し支えない、か……。
 ロープ伝いに下りるのはトラップに対し無防備で好きではないが、仕方がない。
 荷を背負い直して、荷物の脇にカンテラをくくりつけると、熊手型のカギ爪を丈夫そうな岩に引っかけ、さらに結びつけた。用心するに越したことはない。
 ロープは3本あって、ワイヤーロープ2本は急激な落下の衝撃でロックが掛かる仕組みの滑車が付いていて、その安全帯の金具をベルトに付ける。もう1本は速度を調整しながら降下できるような仕掛け器具が付いていて、それを片手で握り締めた。
 ゆっくりと降下を始める。下からはひんやりとした空気が登ってきていた。
 穴を出ると足場のない空間だ。足場のない所でただぶらぶらとしたロープを下りるのは、難しく危険が大きい。
 この器具は、昔エドガーに「こんなん欲しいよなあ」ともらしたら、忘れていた頃に試作品として渡されたものだ。かなり重宝している。
 階下層の床までは、さほどの距離はなかった。さっき垂らしたロープの分だけだ。鍾乳石が立ち並んでいたりしなくて良かったと思う。そんなんだったら下りるところがない。もし延々と地面に辿り着かない場合は、ロープの長さが足りなくなったら戻らなければならないが、このロープを登るのは滑車を操作するだけだから困りはしないが。
「よっと」
 足が地面から30㎝のところまでくると手を離して着地したロックは、すぐに辺りを見回す。
 小さな岩室には何もない。入り口も出口も何もない壁。天井に開いた穴を除けば密室だ。
 ロックは床から壁から、丁寧にくまなく調べ始める。
 上層は仕掛けと罠が多数あった。下層もそうである可能性は高い。
 しばらくして、スイッチらしきものと小さな穴が2つ見つかり、どこからいじるか悩む。穴は直径3㎝ほどで中はよく見えない。かなり固い岩だし自然にできたものではないだろう。
 穴の一つに割り箸を突っ込んでみる。途端、奥で、
    ゴッ!
      ボキッ
 嫌な音がした。恐ろしいことだ……指を入れていたなら潰れてスプラッタだ。指だけだってそんなのは嫌だ。
 もう一つの穴にも割り箸を入れてみた。何も起こらず、引っ掛かったりもしない。先の曲がった棒を突っ込んでみたが、特に何もならない。
 ロックは首を傾げ、その辺に転がっている石そっくりのボタンを押した。罠はなさそうだったが、スイッチ式のボタンと連動した罠の発見は、実はロックが苦手な類だ。
 結果は、背後で ゴンッ という音がしただけだった。
 ホッとして振り返るが、一見何も変わらない。先程の穴にもう一度割り箸を突っ込む。どうやら奥の下側が開いたらしい。そこに先の曲がった棒を入れた。中を探ると、
   ズッ……
 石が動いたような感触。その感触が消えるまでゴソゴソやると、
   ドガーンッッ!!
 いきなり目の前の岩壁が上がって、慌てて棒を離した。天井部分に巻き込まれた岩で棒はおしゃかだ。曲がった部分の長さが穴に入れてから調節できるという、これまたエドガー開発の優れ物だったのに……。仕方ない。
 開けた向こう側は、幾多にも道の分かれた迷路だった。左の壁沿いに、全ての道に行ってみる。これなら絶対に迷わない。変な仕掛けがなければの話だが。
 途中、落とし穴が4ヶ所あった。底の見えない穴もあり、一体こんなダンジョンの奥でどうやって掘ったのだろう? 不思議に思う。
 全ての道をくまなく調べたが、結局元の岩室に戻ってきてしまった。
 となると、怪しいのは落とし穴しかない。3ヶ所は深さ5メートル程で、槍が立ててあったり大量の蛇が蠢いていたりした。ということは、底なしの穴が怪しいということになる。
 ロープはまだあるが、先程の降下装置はあれしかない、が、降りるより他にないのだ。
 ロックは覚悟を決めて、落とし穴に降りることにした。
 足下の石を踏むと開く仕組みなので、それが開きっぱなしになるよう重しを置き、二股かぎ爪付きロープを適当な所に固定する。靴裏に滑り止めを装着し、指先だけ出していた皮のグローブから、手全体を覆う滑り止めのついたグローブに変えた。
 準備を終えると落とし穴に入る。入り口付近はいびつに掘り込んだ円形だったのだが、5mばかりで正方形へと変わる。削り出したような岩壁は滑らかな石組みの壁になっていた。
「やっぱ、当たりっぽいな」
 呟いて、周囲の壁を入念に調べながら降りていく。正直、停滞している時間が長いのは辛い。しかしここで手を抜くと必ず失敗する。
 予想ではどこかに横穴があるはずだ。下まで行ってしまったら、白骨が山になっているかもしれない。
「ビンゴ♪」
 微かに感じの違う壁を見つけたロックはほくそえんだ。少しだけ周囲よりへこんでいる。
 押すと反転する壁で、そこに滑り込むとロープを離す。
 高さ1m50㎝弱の横穴を、四つん這いで進んで行く。結構長い横穴を抜け、終着点まで行くと、天井が3m程になった。
 そして上へと伸びる階段。見上げると、優しい光が漏れている。
 ロックは、ごくりと生唾を飲み込んだ。
 ゆっくり階段を上がっていく。
 50段の急な階段の向こうは、台座のある広間だった。
 無骨な石造りの部屋の中央に鎮座する台に、強く輝く剣が二振り捧げられていた。
 透き通った青と柔らかい乳白色の刀身は何でできているのか……(後に調べたらどちらも水晶で、ブルークォーツとミルキークォーツと判明した)。
 生命力を刃にするアルテマウェポンは禍々しさを伴う妖しい青白い光を纏っている。しかしこのフラタニティは、柔らかく穏やかな光を放っていた。
 どちらも同じ作りで刀身に古代文字が彫り込まれている。銀色の柄は尻に丸い水晶が付いていて、握りやすいようにか片方が緩やかな波形になっている。
 台座の前に立ったロックは、まず青い刀身の剣を手に取った。
 すると、すうっ……と光が収縮し、いつの間にか抜き身の剣は細かい彫りの入った鞘をその身に纏っていた。
「どんな魔法だ……? いや、もう魔法はないのか。どんな力なんだ?」
 呟いたが、それはわからない。
 伝説では魔大戦よりも更に昔に“絆の守護神”とやらが人間に与えたらしい。そんな伝説はアテにならないと思っていたが、あながち嘘でもないのかもしれない。
 もう1本も、手に取ると同じように自動的に鞘を纏った。
「これで、セリスに……」
 ロックは2本の剣を背負うと、今、来た道を帰っていった。

 

†  †  †

 

 早くに母親が死んだロックは、祖父母に育てられた。
 父親はトレジャーハンティングに忙しく常に不在だった。
 祖母の昔語りと、祖父のトレジャーハンター時代の話を聞くのが大好きな子供だった。
 祖父は父親に代わり、トレジャーハンターになるための様々なことを教えてくれた。
 その祖父母も、ロックが13歳になる前には亡くなり、父親はいつの間にか行方不明───多分、どこかの遺跡で死んでいるのだろう。
 ロックは一人、未熟なトレジャーハンターを始めた。
 一人とは言っても、父親の仲間や知り合いは親切にしてくれた。
 命を落としそうになったこともあったが運が良かったのだろう。今まで生きている。
 色々なことがあった。
 トレジャーハンターになってからの人生は、後悔ばかりだった気がする。
 ベテランである祖父の話ばかりを聞いていたから、理想だけが先走っていたのだろう。
 今でこそ気付いているが、その時は自分の未熟さに気付けなかった。
 未熟さを認めることは、子供には辛いことだ。ただでさえ歯がゆい思いをして生きているから余計だろう。
 現在のロックは自分の未熟さをわかっていて、それを少しでも克服したいと思っている。
 あるべき理想に近付くには、足りない部分を知らなければ不可能だからだ。
 セリスに相応しい男でありたいから。
 彼女の心を守れるような男でありたいから。
 ───これからも、理想を抱き続ける。
 結婚して3人の子供を可愛がり、そういった具体的な理想じゃなくて。セリスの心を支え、彼女に微笑んでいてもらえるように、そんな漠然とした理想だけれど。
 努力し続けている限り、理想に近付き続けることができると、ロックは信じている。

 

■あとがき■

「理想論」なんて掲げてるけど、余り中身と関係ないかもしれません。オマケみたな回になってしまいました。プロポーズする前に、ロックの真面目なトレジャーハンティング姿を書こうと思って……何故そんなことを思ってしまったんでしょう? 難しくて大変でした。最初は滝の裏の洞窟にしようかと思ったけど、それには使いたい素材があるのでまた今度。
「高い壁に挟まれた谷底」っていうのは、ゴゴのいるダンジョンって番人に触れると落とされますよね。その後、宝箱の取れる場所に行くけど、更にその下をイメージしました。
 私にしては珍しく、感情を示す文が少ないです。剣フラタニティは、他のシリーズに出てきたのかどうかしりませんが、Ⅹの攻略本見て決めました。Ⅵに出てきてる名前は使えないからね。ⅥとⅩの攻略本しか手元になかった……。 (03.10.26)
 誤字脱字修正、文章補正を行いました。 (05.10.02)

ⅲ.恋愛論

 恋とは焦がれるものだ。
 愛とは慈しむものだ。
 では恋愛とは? 楽しむもの、かもしれない。
 そこから婚姻へと発展すると、縛るものへと変わる。
 生活、考え方、全てが同じ者など存在するはずもなく。
 妥協が生まれる。恋愛と結婚の差はそこにある。

「恋愛論」孤高の王 サラスバティ

 

†  †  †

 

 ロックは予定通りの日に、モブリズへと帰ってきた。
 孤児院の夕食を終え、後片づけをしていると、
「ただいま~♪ 疲れたー」
 ご機嫌な口調でそう言って扉を開けて入ってきた。
 その後風呂に入り食事をとると、速攻眠ってしまったのだが、日程はかなりの強行だったから、そのせいだろう。
 少しでも早く心を軽くしたいセリスは、この間の診断結果を告げるタイミングを探すことすらできず、翌日に持ち越しを余儀なくなれた。

 次の日、セリスはティナ等と共に子供達を連れ海岸に来ていた。
 赤道に近いせいで常夏ではあるが、湿気が少ないためじめじめした暑さではない。子供達にも過ごしやすい環境だろう。
 週に一度は全員で行うレクリエーションの日としている。普段は子供達も大人と共に畑を耕したり、家事の手伝い、年長の者は子守などと、遊んでばかりいるわけではない。そのご褒美、というわけだ。
 レクリエーションの日のほとんどがすぐ目の前の海岸へ行くことだ。子供達も海水浴が大好きだし、無理なく遊べる。サメにだけ気を付ければ、波が穏やかな入り江は格好の遊び場と言えた。
 チャーリーとスヴェラに、しっかりと準備体操をさせられた子供達は、はしゃぎながら海へ入って行く。
 無邪気なあどけなさが眩しくて、セリスは溜息を吐きだした。
 岩場に腰掛け、一人ぼうっとする。
 今日はとてもではないが、ティナのように子供達に混じる気にはとてもなれなかった。
 ロックになんて切りだそう? 散々考えたクセに未だ決まっておらず、延々同じ事を悩んでいる。
「今日は体調、悪いのか?」
 声を掛けられ振り返ると、ロックが立っていた。
 セリスは何故か少しだけホッとしてはにかんだ。
「ううん、そうじゃないけど……」
「子供は元気だな」
 ロックは笑いながらセリスの隣に腰掛ける。
「そうね」
「俺だって、子供の頃って、毎日が新鮮で発見の連続だったもんなぁ。未来永劫、それが続くなんて思ってた」
 セリスの想像する限りほとんどの子供がそうだろう。環境が良ければ立ち直りも早い。
 だがセリスにはそんな記憶は全くない。同じ年頃の子供と遊んだこともないし、笑った記憶すらなかった。
 物心ついた時には魔導研究所にいたのだから仕方ないことだろう。それでもセリスは、己の惨めな過去など微塵も悟らせずに答えた。
「子供の特権だもの」
「そうだな。くそ生意気だったりするけど、子供って可愛いよなぁ」
 ロックは優しい笑みで、海辺で戯れる子供達を見つめる。
 その横顔が胸に痛くて、セリスは泣きたくなるのを必死に堪え、なんとか笑顔を浮かべた。
「そうね。色々な子がいるけど、みんな、それぞれいい所があるわ。長所を伸ばしてあげれば、いいのよね」
 ロックはセリスの方を向くと、とびっきりの笑顔で、
「きっと、俺達の子供も可愛いぜ」
 そう言って、照れくさそうにしたのだが、セリスはさっと表情を強張らせた。
(そんなこと言われたら……言えなくなる)
 それを見たロックは、
「まだ、子供、苦手か?」
 苦笑いをした。モブリズに長期滞在することになった最初の頃、「どう対応していいかわからない」なんて漏らしていたからだ。
「……そんなことないの」
 首を横に振ったセリスは消え入りそうな声で返す。なんだかいつもと違う様子の彼女に不安になったロックは、
「俺の子供なんか産みたくない、とか?」
 そう尋ねた。遠回しに別れたいと言っているのかと思ったのだ。
(産めないのよ)
 セリスは逡巡したが、溜息混じりに呟いた。
「あなたの子供だからとか関係ないの。私は子供が欲しくないだけ」
 “産めない体だ”とは言えなかった。それが己の業によることだからとかではなく、ロックが望んでいる夢を打ち砕くのが恐くなったから。
 第一、“産めない”も“産みたくない”も同じ事だ。子孫を残さない、という一点において。
「……なんでだよ」
 ロックは変な顔になる。セリスが子供を苦手としていることは知っていたけれど、欲しくないなどと聞いたことはない。
「好きじゃないし。産みたくない」
 セリスは俯いて蚊の鳴くような声で答えた。
「本気で、言ってんのか?」
 ロックは目を見張った。
 以前、ロックが「子供をトレジャーハンターにする」と言った時だって、セリスは「あなたの跡を継がせるのね」なんて微笑んでいた。まさか自分は関係ないと思って答えたわけではないだろう。気が変わった?
「冗談で言うはずないでしょ。とにかく、私は絶対に子供を産まないわ。……あなたの条件から外れるとしても」
「条件?」
「代々トレジャーハンターの家系だから、それを継ぐ子供を産める。それが条件、でしょ?」
「……条件って……条件てわけじゃねーよ。ただ、子供が産まれたらそうしたいってだけで」
 渋い顔になったロックは尋ねる。
「何か嫌なことでもあったのか? 苦手でも嫌いじゃなかっただろう?」
 セリスは一瞬動揺しそうになったが、全てを覆い隠し、
「別に……」
 とだけ答えた。ポーカーフェイスがこんなところで役に立つ。
「……でもお前はまだ若いから、気が変わるかも知れない。いや、変えてみせるよ」
 自信たっぷりに、ロックが言った。彼のそういう所が好きだったけれど、今は逆に腹立たしい。
 有り得ないのだ。何故なら、セリスは子供を産むことを望んでいるのだから。望んでいながら決して授かることがないのだから。
「無駄よ。そういう期待は無駄。無意味よ」
 すげなく言ったセリスに、ロックは眉根を寄せる。
「やたら頑なだな。なんでそんなに……。大体、もし子供ができたらどーすんだ? おろすのか?」
 そんなことは絶対にさせるつもりはなかった。
「ええ」
 セリスは唇を歪めて自嘲した。
 もし子供ができたら? おろすはずがない。そんなことが起こりうるなら、涙を流して歓喜するだろう。ただ、有り得ないだけだ。
「……信じらんねえ。お前がそんな事言うなんて。同じ命なのに……」
 ロックは片手で抱えた頭を、立てていた片膝に寄せた。
「幻滅、したでしょう? でも、この考え方の違いって、あなたにとって決定的だろうから」
 セリスは皮肉っぽいいびつな口元で言い、岩場から腰を上げた。
「丈夫な子を産む気がある女性でも、探せばいいわ」
 そう言い残し、呆然としているロックを置いて、村の方へと戻って行った。


 頭の中がぐるぐるして納得できず、ただ呆然としていたロックは、
「セリスはどうしたの?」
 ティナに声を掛けられハッとした。彼女がすぐ目の前に立つまで気付かなかったのだから、相当ダメージを受けていたのだろう。
「いや……ちょっとな」
 言葉を濁すと、3人の子供が近付いて来た。
「ロックにーちゃんも遊ぼう!」
 満面の笑みで誘われ、ロックが断れるはずもない。
「おう!」
 嫌な気分を吹き飛ばしたいこともあって、ロックは子供を追って掛けだした。


「ほら、あんなに楽しそう」
 モブリズに残った建物の一つ、最も高い建造物である教会の鐘突塔の上で、海辺に小さく見える人影を眺めていた。
 子供と同じ視点に立って上げられる優しい人が父親になれないなんて悲しすぎる。例え彼が「セリスがいてくれればいい」と言ったとしても、それは妥協だ。
 セリスがいて二人の子供をもうけて、という未来を望んでいたのを知っている。それから考えれば、どうしても妥協と言わざるをえない。
 それならば、丈夫で子供を産むことが可能な他の女性と結婚する方がいいのだろう。
 今はセリスと二人でいいと思ったとしても、実際問題として年老いた時に子供がいないことも寂しく思うだろう。彼は優しいから口には出さないだろうが、セリスを選んだことを全く後悔しないとは言えない。特にセリスが先に死んだりした場合、年老いたロックは独りぼっちになる。
 何をどう考えても、もうダメだと思った。あそこまで子供好きな人でなかったら、別だっただろうに───。仮定は考えても意味のないこと。
 楽しそうに戯れる人影を見つめながら、セリスはただ静かに涙を落とした。

 

†  †  †

 

 就寝前、ロックは渋るセリスと外に連れ出した。
 彼女は相当嫌そうだったが、あんな会話で終わらせるなどロックにはできなかった。
「何の用なの?」
 海岸線で前を歩くロックは、立ち止まったセリスに呼び止められた。彼女は明らかに不快そうだ。
 ロックの気持ちまで急激に醒めていく。
「お前は───俺と別れたいんだな?」
 振り返った彼女を射抜くように見つめると、セリスはびくりと硬直した。唇を噛みしめ何とか言葉を絞り出す。
「いいえ。私は子供を絶対に欲しくないだけよ。ただ、あなたはそんな私は嫌だろうと思って」
 強張った口調に眉をひそめたロックは、
「どうしてそこまで拘るんだ? 例えできてもおろす? お前、そんなこと言うような奴じゃねーだろう」
 不快そうな表情をしているセリスに詰め寄った。
「同じことだからよ」
 セリスはいびつな嘲笑を浮かべていた。
「同じ事?」
「おろす? そんな必要すらないのよ。できるわけないんだから。そんなこと考えるだけ無駄」
「何言って……」
 ロックは彼女の言いたいことが飲み込めず、まじまじとセリスの顔を見た。そして、泣き出しそうに歪んだ表情で紡ぎ出された言葉に、ギョッとすることになる。
「私は子供なんか作れないの。将軍時代に投与された薬のせいで、私の身体は子供なんかできないのよ。産む産まない以前の問題」
「え……?」
 ロックはぽかんと間の抜けた顔になる。
「あなたがどんなに望み、努力したって、どうにもならない現実が存在するの。残念ね」
 冷たく見下したように言ったセリスに、ロックは憮然として尋ねる。
「つーか、お前、子供は嫌いだから欲しくないって言わなかったか?」
「同じことでしょ。結果は同じ。欲しくないって理由だったら私の意志は尊重されず、できないって理由だったら諦めて飲み込むわけ?」
 そんなことが言いたいわけではないのに、セリスは嫌みをぶつけていた。
「だって、全然違うじゃねーか……。できた子供をおろすなんて」
 ロックは困惑してセリスを見た。
「どうでもいいわ。頑張ってトレジャーハンターを継ぐ子供を産んでくれる人でも探して」
 セリスはくるりと背を向けた。
「セリス!」
「どんな言葉をくれても、それがあなたの一番の望みじゃないって知ってる。だから無駄」
 言い残して、帰ってしまった。
 彼女の言葉がロックの胸に渦巻く。
 一番の望み? セリスと共に、平凡だけどささやかな幸せを持つ家庭を作ること、だろうか。
 だが子供がいなければどうしても嫌だ、というわけではない。“作りたくない”というのは納得いかないが、“できない身体”ならば仕方なかった。
 セリスにはその『仕方ない』が許せないのだろう。
「どーすりゃいいんだよ……」
 苛立ちを込めて地を蹴ると、白い砂が波間へと飛んで飲み込まれた。

 

■あとがき■

 二人は壁を乗り越えられるのか!?
 セリスの望みが高すぎるのでしょう。ですがそれは自分自身が子供を欲して、その夢を打ち砕かれたのだから情緒不安定になっても仕方ないかも知れません。ロックはそれをわかっていても、一体彼女がどうして欲しいのかがわからない。
 次、どうやってまとめましょう? 頑張ります。ちゃんと5回で終わるかな? (03.11.01)
 誤字脱字修正、文章補正を行いました。 (05.10.02)

ⅳ.幸福論

 幸福の定義は存在しない。
 一つ言えるのは、構築していくものだ、ということだろう。
 そして持続するには努力が必要だ。
 常に理想とする幸福像に近付くように生きていかないと、
 幸福とはいとも簡単に崩れ去っていく。
 幸福とは、ただ幸せであるだけのものではない。
 だからこそ、幸せだと実感できるのだろう。
 若い頃『孤高の王』などと呼ばれ孤独であった私が望んだ幸福は、孤独でないこと、だ。

「幸福論」孤高の王 サラスバティ

 

†  †  †

 

 翌日、古くなった雨樋を直し終えたロックに、暇を見つけたティナが話しかけてきた。
「ねえ、セリスと喧嘩でもしたの? セリスに聞いても“別れた”とか言ったけど、本当?」
 余りに率直に尋ねられ、ロックは表情を無くした。“別れた”その言葉が胸に突き刺さる。
「……わかんね。あいつが何を望んでんのか、わかんねーんだ」
 幸せに笑ってほしいと、今でも思うけれど。
「セリスが別れようって言ったの?」
 ティナが尋ねてきた。どうやら子供ができない話はしていないようだ。
「ま、そんなもんだ」
「ロックはそれでいいの?」
「よかねーけど、あいつが聞く耳持たねーんなら仕方ねーよ」
 溜息混じりに言った。
 少し冷却期間を置くべきなのかもしれない。落ち着けば彼女も話を聞いてくれるだろう。ただ真っ正面からぶつかるだけが手段ではないのだ。
「明日、俺はコーリンゲンに戻る。あいつのこと、頼むな」
 ロックは儚げにはにかんだ。
「本気なの!?」
 ティナは目を見開いて甲高い声を上げた。
「ああ。これ以上、ここにいても仕方ない」
「そんな……」
 絶句したティナだが、ロックが何も言わず立ち去ってしまったので、
「そんなのってないよ」
 悲しそうに俯いた。
 こんなに簡単に終わってしまうものなのだろうか。色々あったけど、二人は幸せそうだった。互いを思いやっていたのに……。
 スヴェラとチャーリーに相談したら、
「そういう時期って必ずある。それを乗り越えられるかどうかで、一生、一緒にいられるかどうかが変わるんだ。そっとしておきなさい」
 そう言われてしまった。
 かつての仲間として、友人として何もできないことは、歯がゆいことだった。

 

†  †  †

 

 ロックは宣言通り、一人でモブリズを発った。
 あれから一月が過ぎて、セリスは毎日を腑抜けた表情で送っていた。
「あーあ」
 洗濯物を干し終えて一人ごちる。
 空は晴天、気持ちいいぐらいだが、セリスの心はどんより大曇りだ。
「私、バカだ……」
 今更ながらに思いっきり後悔している。
 妥協だとしても、一緒にいてセリスを選んでくれるというのなら充分だったのだ。
 落ち着いてみると、どうしようもなく寂しくて心細くて、ロックが恋しかった。
 ヤケになって意地張って、挙げ句後悔なんて、目も当てられない愚かさだ。
 子供ができないなら、その分、セリスが頑張ってロックに幸せだと感じてもらえるよう努力すればいいのに。
 だけど、もう取り返しはつかない。一度、自ら手放したものを再び望んだところで、取り戻せはしないのだ。望むこと自体が浅ましく感じ、己に嫌気がさす。
「ふうっ……」
 セリスは立ち上がって、無造作に結わいていた髪をくくり直すと、昼食の用意を手伝うために孤児院へと入って行った。


 午後は子供達と畑を耕し、夕食後シャワーを浴びて、孤児院を出た。
 交代で町の見回りをしていて、今日はセリスが当番の日だ。
 ケフカを倒して3年が経ち、世界は落ち着いてきたことは確かだ。
 だが崩壊前と比べ、賊の数は増大していて、未だ減ってはいない。
 モブリズは子供が多いのに自衛手段を持たず成人男性が少ないと狙われやすい条件のため、用心することにしている。
 子供が増えたために増築を重ねた孤児院は間抜けな外観になってしまった。その周囲をぐるりと巡って、ちらほらとある戸建ての合間を抜けた。柵に囲われた町の周囲の確認をしようと、出口へ向かおうとして、足を止めた。
 町の入り口から向かってくる人影は、見覚えのあるもので……。
「ロック……」
 名前を呼ぼうとしたが、声にならなかった。
「よお、タイミングいいな」
 ロックは以前と変わらぬはにかみを浮かべた。
「あ……」
 セリスは何かを言おうとしたが、自分でも何が言いたいのかわからない。ただ、たまらなく切なくて、苦しくて、込み上げてくる何かを堪えきれずに俯いた。
   ぽとり
 涙が地面に落ちる。
 泣くなんて卑怯だ。自分から別れを告げたのに、何て勝手な態度だろう。
「なんだよ、いきなり」
 ロックは困ったような顔で近付いてくる。
 嗚咽を堪えて首を横に振ったセリスは、逃げ出したいのに足がすくんで動かなかった。ましてや「会いたかった」などと言えるはずもない。
「俺はさ、会いたかったよ」
 ロックはあっさりと呟く。
「え?」
 セリスは嗚咽を止めてロックを見た。彼は苦笑いで手を伸ばし、泣き腫らした彼女の頬に触れ、そっと涙を拭う。
「お前が頭冷やして、俺の話聞いてくれるまで少し時間置くべきだって思ったのはいいけど、会いたくて、気がふれそうだった」
 言い終わらぬうちに、セリスをぎゅっと抱きしめた。話の展開についていけないセリスは呆然としている。
「なあ? 幸せのカタチって色々だろ? 最初から決めるものじゃなくて、状況に応じて創っていくものだろ? 俺は、お前とさ、手探りでいいから、幸せを創っていきたいんだ」
 ロックの腕の中で小さくなっていたセリスは、しゃくりあげながら必死に何度も頷いた。
「結婚しよう。お前を護り続けたい」
 真っ直ぐセリスを見つめて告げられた言葉に、
「いい、の?」
 掠れた声で顔を上げると、優しい色を湛えた深海色の瞳がそこにあった。
「幸せにするとは言わない。俺一人の力じゃ無理だ。二人で、幸せを創っていこう」
 信じられなくて、嬉しくて、セリスの瞳から再び大量の涙が溢れた。
「なんだよ、泣くなよ」
「ごめん。だって、夢、みたいで……」
 顔をぐしゃぐしゃにして泣きじゃくるセリスの頭を、ロックはそっと撫でてあげる。
「夢なんかじゃないさ。夢は夢でしかない。これは現実だ」
 優しく懐かしい、2ヶ月ぶりのロックの腕の中で、セリスは気が済むまで泣いていた。

「そうだ。お前に渡そうと思ったものがあったんだ」
 嗚咽が止まり落ち着いたセリスを解放して、ロックは背中にくくってあった剣をおろした。
「剣?」
「そ。この間、ゴゴの洞窟行ったろ? そこで手に入れた。一応、伝説の“守護剣”らしいけど、本当の所はわかんねんだ」
「へえ……」
 薄青と白の二対の片手剣。セリスはなんとなく白い方を手に取った。
「お前さ、調子のいい日は朝、剣の素振りかかさねーだろ?」
 にっこり笑ったロックに、
「完全に身体が鈍っちゃうのは嫌なんだもの」
 セリスは拗ねたように呟く。
「わかってるよ。だけど、もうお前が人を斬らずに済むようにと思ってな。護りの為の剣だって聞いて、プレゼントしたかったんだ」
「ロック……」
 彼の想いに、セリスは胸が熱くなる。
「ま、実際は守護ってったって、どんなんだかわかんねーんだけど」
 苦笑いしたロックを前に、不思議と手に馴染むその剣を、柄から抜いた。
 すると剣はぱあっと眩い輝きを放つ。それはすぐに収まったが、刀身は静かな淡い光を帯びていた。春の木漏れ日を思わせる優しい光は、呼吸をするように(またた)いている。
「不思議な剣ね……」
「だろ? 遙か昔に“絆の守護神”とかいう神が人に与えたものだって、トレジャーハンターの間じゃ有名なんだ。まあ、存在自体伝説になってた」
「そっちは?」
 小首を傾げたセリスに、ロックは薄青の剣を抜き放つ。
 同じように輝いた後、青みを帯びた澄んだ光を帯びていた。二対の剣は呼応するように、瞬き合う。
 呆気にとられたようにそれを見つめるセリスに、ロックは悪戯っぽい笑顔で言った。
「式ん時に、この剣に誓いを立てるよ」
「え?」
 セリスはキョトンとする。自分が挙式できるなどとは思っていなかったのだ。ロックがプロポーズしてくれるかもと思った時も、式のことは思いつきもしなかった。余りにもかけ離れたものだったから。
「ベクタの大聖堂でな」
「そ、そんなところで!?」
 セリスは素っ頓狂な声を上げた。
 大聖堂は、ベクタ再建の折に、慰霊のためと平和の象徴として造られることになった。完成予定は来月末だ。
「そ。オープニングセレモニーに組み込んでもらうっていう手もあるな」
「な、なに言ってるのよ。そんなに無理に決まってるでしょ」
 慌てて言ったセリスを、ロックは笑顔で見つめる。
「第一、恥ずかしい」
 照れたような仕草と表情は、セリスの中で一番好きだった。
「出資者はエドガーだからな。きっとOKしてくれる」
「もうっ! そんなの嫌よ。仲間内でできればそれでいいわ」
「わかってる。冗談」
 にこにこ顔だったロックは、セリスを覗き込んで尋ねる。
「まだ、返事もらってないぞ?」
 改めて言うことを促され、顔が熱くなったのが自分でもわかったセリスは恥ずかしくて俯いてしまう。
「……うん。嬉しい。一緒に、いようね」
 甘い小声に、ロックは叫び出したい衝動を堪える。
 今までで、セリスを一番可愛らしいと思った瞬間だった。
「次は、お前が何言っても聞かないし離れないからな」
 そう言って、ロックはもう一度彼女を抱きしめた。
 はにかんだセリスは、
「うん。離さないでね」
 これまた可愛らしい声で、呟いたのだった。

 

■あとがき■

 奇蹟は起こしませんでした。奇蹟によって何かが補われてしまったら、現実を乗り越えていく力が失われていくだろうという、これまた桜の現実主義な考え方からです。すみません。でも、実際、奇蹟なんて数える程しかなく、その現実を受け止めて、それを前提に幸せを再構築してかなければならないと思います。ロックとセリスにも、そうしてほしかったんです。どんな状況でも、幸せになろうという努力をする。これが、桜の理想です。
 それにしても、さすがにラブラブのパターンがなくなってきました。だってさ、愛の言葉とかって限られてるじゃないですか。表現もシュチュエーションも。「あの話と似てる」とかいうのは、ご容赦ください。(多分、これからも多々あると思うので)
 さて、残すはあと1話となりました。次回! 感動の(自分で言うか?)結婚式です。 (03.11.08)
 誤字脱字修正、文章補正を行いました。 (05.10.02)

ⅴ.人生論

 人生を言葉で語ることは不可能だ。
 だが人は言葉で表すことを望む。
 もし私が、人生を一語で示せと言われたら───“暗中模索”だ。
 未来が見えることは決してない。未来像を描くことは可能でも、過去から現在しか見ることができない。
 暗闇を手探りで探し求める。まさに、人生を表すに相応しいと思う。
 だが、それは私にとっても人生にすぎない。だから、全ての人の人生を一語で表すことは、不可能なのだ。

「人生論」孤高の王 サラスバティ

 

†  †  †

 

「なんだかキンチョーするね」
 愛らしく着飾ったリルムが呟いた。
 ふわふわの栗毛に小花を散りばめた姿は、花の妖精のようなのだが、
「ガキ」
 セッツァーに鼻で笑われ、リルムは「いーっだ」と舌を出した。
 競売に出す絵を引き取りにサマサへ頻繁に訪れるセッツァーとは普段から会っているが、いつも憎まれ口ばかりだ。たまにおめかしした時ぐらい誉めてほしいのだが、本日の開口一番、
「馬子にも衣装」
 などと、お決まりの台詞を言われ面白くない。
「セリスが結婚しちゃうんで、ふてくされてんの?」
 そう言ってやると、セッツァーは剣呑に目を細め鼻を鳴らしただけだった。
「それにしても……」
 リルムは呟いて大聖堂のホールを見上げた。
 高い天井は色とりどりの硝子により天使の描かれたステンドグラスだ。この図案はリルムが描いた。
 その天井の中央から、天球儀と呼ばれる水晶細工のオブジェが下がっていて、光を受けて幻想的な輝きを撒いていた。天球儀の真下には台座が設置され、2対の美しい剣が捧げられている。
 入り口からは青い絨毯が伸び、ホールの正面は階段状になっていて、その一番上、舞台のような部分は両側に天井まで伸びるパイプオルガンがあった。
 平和を象徴に謳われたこの建物は、資料文献や貴重な絵画でしか見れない古代の神殿を参考としている。
 パイプオルガンの前では、白いシャツで統一した孤児院の子供達が並んでいた。式で歌われるのは「祈りの歌」で、この日のために猛特訓したらしい。
 大聖堂ができて初の婚儀は、後に人々が利用してくれるよう参列自由なのため多くの人が見物に来ていた。
 セリスの噂のせいもあるだろう。元帝国将軍であり、帝国を裏切った後フィガロ王に協力してケフカを倒した一人。地元ベクタでは元々有名人だ。
 本人は素性を明かされるのを好まなかったが、フィガロ王エドガーが「隠さない方がいい」そう言ったため渋々承諾した。
 式の時間間近になると、進行役のエドガーが正面中央に立った。
 国王らしい大粒のダイヤを頂いた王冠をかぶり、更に珍しくも錫杖を持って、ワインレッドのガウンを羽織った姿。いつもの一見軽薄にも見える笑みはどこにもない。
 その威厳ある佇まいに、人々はシン……となる。
 エドガーは一同を見回して、一つ間を置き、
「ロック・コール、セリス・シェールの婚姻の儀を始める」
 厳かに始まりを告げた。
 薄桃色のドレスを纏った女性が、ゆっくりとパイプオルガンを奏で始める。
 緩いウェーブの金髪の後ろ姿。彼女はなんとオペラ座の看板女優マリアだ。
 パイプオルガンを弾ける者を貸して欲しいと頼んだら、自ら名乗り出てくれた。双子かと思われる程似ているため他人の気がしないと笑って言っていた。
 前奏が終わり子供達が可愛らしい声で歌い始めると、左奥の扉が開いた。
 一歩、一歩、しずしずと入ってきたのは純白のドレスをまとってたセリスだ。
 首部分から上半身を覆っているがノースリーブで、長いレースの手袋をしている。
 ウエストが細くしぼられたドレスはマーメイドタイプと呼ばれる形で長身スレンダーな人にしか似合わない。腰に綺麗に形作られたリボンが後ろに垂れて長く広がっている。
 スカートは前部分で交差するように巻かれている形で、膝下から彼女の綺麗な足が覗いていた。
 サテン地のドレスは全体に薔薇の刺繍が施されており、幾つもの真珠が散らされている。アクセントはブルークォーツの3点セットで、首にはドレスの上から大粒のブルークォーツを頂いた豪奢な銀細工のチョーカー、ピアスは3㎝ほどの細い円柱型のブルークォーツが下がっていてクールな感じ、額には涙型のブルークォーツの両脇にブルームーンストーンが添えてある。
 長い金の髪は細い水色のリボンと共に編み込まれてアップになっていて、白い小花がいくつも散らされていた。
 その全てが美しく、リルムは思わず溜息をついた。勿論リルムだけでなく、その場にいる誰もがセリスに釘付けになっていた。
 ロックが釣り合うのかと少し心配になってしまう。
 中央まで来たセリスは剣の台座の左側に立った。そこで歌が終わり、別の曲が流れ出す。ウェミンヘン・ハミングウェイ作曲の「誓い」だ。
 後方の扉が開いた。
 逆光に佇む人影───ロックは、クリスタルプレート、小手、臑当てを装備して騎士の正装をしている。
 いつものバンダナは外していて、代わりに銀のサークレットを付けていた。真っ青なマントが風にはためく。
「別人……」
 思わずリルムは呟いてしまう。
 ゆっくりと歩みを進め、剣を挟んでセリスの反対側に立つと、二人同時に正面を向いた。
「これより、誓いの儀を執り行う」
 エドガーが言った。
 大昔、帝国が別の名で呼ばれていた頃、行われていた騎士達の結婚式に習った形式にすると聞いている。
 シルドラ・ポートリオ・コールトという有名な古代の作家の「ルクレチア物語」という女騎士ルクレチアの話に出てくることでも知られていて、話中では新郎新婦共に騎士という珍しいスタイルの式が書かれている。
 セリスも剣を扱うからそれを真似るのだろう。
「剣を手に」
 エドガーの声に、ロックとセリスは共に剣を取った。
 色違いの美しい剣が台座から消えると、ガコンッという音がして台座が沈んでいく。
 仕掛け好きのエドガーが設計に関わっているからだろう。なかなか凝ったことだが、このためだけに作ったのかもしれない(職権濫用?)。
 床がすっかり平らになってしまうと二人は向かい合い、剣を横向きに捧げるように両手で持った。
 パイプオルガンの音が小さくなると、すらり、二人は同時に剣を抜く。
 眩い白と青の光が溢れ、一瞬騒然となった。光はすぐに収まったが、あの二対の剣が無銘でないことを人々に知らしめる。
 まず動いたのはロックだ。空を斬るように剣を横に薙ぐと、青白い光の帯がすうっと消えた。その体勢からくるりと柄を回し持ち替えると、立てた剣を胸の前に構え、セリスの前に跪いた。
 セリスは剣を抜く前と同じように、両手を差し出し、右手で剣を持ち左手は人差し指と中指を剣に添えている。
 片膝を着いたロックは、静かに、だがはっきりと宣言した。
「絆の守護神に与えられし我が護りの剣フラタニティに誓う。この命尽きるまで、セリス・シェールを愛し、守り続けることを」
 その言葉を受けたセリスは左手を下げ、剣を頭上へ掲げた。
 一呼吸置いて、剣がすごい早さで振り下ろされる。
 誰もが息を呑んだ。
 思わず目をつぶったリルムがそっと薄目で見ると、剣は肩の上でぴったりと止まっていた。あの寸止めはセリスの腕が微塵を鈍ってないことを示している。
「あなたの誓いを受け入れ、私も誓います。絆の守護神から授かり護りの剣フラタニティに。命ある限り、ロック・コールと共に戦い、愛し続けることを」
 言い終えたセリスが剣を上げると、ロックが立ち上がる。
 二人は微笑み合うと、頭上で剣をあわせた。キンッという澄んだ音がして、交差された剣は再び眩い輝きを帯びた───二人の誓いを受け入れた証のように。
「誓いは成された。破られることなく、守り続けられるであろう。ロック・コール、セリス・シェール、この二人の神聖なる婚姻に祝福を!」
 高らかなエドガーの声に、
「わぁっ」
 と歓声が上がり、無数の小花と紙吹雪が降り注いだ。
 フラワーシャワーの中、セリスの剣をとったロックは控えていた女性に自分の剣と共に渡すと、彼女を軽々と抱き上げた。
 ポーカーフェイスを崩さなかったセリスの頬が赤く染まり、ロックの首に腕を回すと恥じらうように、だが幸せそうに微笑んだ。
 人々の間、青い絨毯の上を、二人が通り過ぎていく。
 眩しい光溢れる外へ出た二人は、光に飲み込まれたかのように見えた。
 きっと輝ける未来が、待っている───

 

・ fin ・

 

■あとがき■

 これをもって、「誓い」をhikariさんに捧げたいと思います。桜が考えたオリジナル結婚式。綺麗な雰囲気が伝わったでしょうか? 自分の文章力の限界を感じました(いや、いつも感じてますが)
 何故かリルム視点ですが(まあ三人称だけど)、第三者視点の方が式を綺麗に見せられると思ったので……。ロックの衣装はすっごい迷いました。でもタキシード似合わないだろうし、FF世界じゃ変だし……。ということで、騎士の格好です。ダイヤアーマーセットでもよかったけど、FFはやっぱクリスタルなので。でもロックは鎧無理なのでプレートです。出てくる作曲家とか小説家とかは適当に考えてます。ハミングウェイはⅣで歌ってたよね^^; ということで、FFシリーズの名前使ってみました。紛らわしい?
 なんか短く思えるけど、文章量は他と変わりません。ただ一文が長いからスクロールすると少なく思えるだけです。
 冒頭の文書くのに、適切な言葉が思い浮かばなくて四字熟語辞典引きました。四字熟語って好きです。自分で適当に書いている文なので、意味不明なことが多いと思われます。お許し下さい。決して哲学でもなんでもありません。強いて言うなら、桜的哲学の一つ。でも、桜が書いた通りに考えているわけじゃありません。今回はFF6上での架空の人物「孤高の王サラスバティ」って人を想像して、こう思っただろうとか考えて書いてます。考え方の一つにすぎません。私はそんなに悲観的でもないし、楽観的でもありません。現実主義者だと自分では思うんです。けど、理想主義者かもしれません。 (03.11.15)
 誤字脱字修正、文章補正を行いました。 (05.10.02)

【この頁で使用させて頂いた素材サイト様】 ClipArt:トリスの市場