Written by 椿姫
と、ここにはティラノサウルスとブラキオレイトス、通称”最恐恐竜コンビ“が出没するのです。彼らはとても強くて凶暴。彼らのせいで全滅したパーティーも多く、一説によると死者は年間100人をくだらないと言われています。(あまり人が通らない割にはものすごい死者数ですね!!)
そんな森に、ある日4人の冒険者達がやってきました。
彼らは崩壊した世界を救うべく立ち上がった勇者達です。悪の根源ケフカを倒すために特訓しに来た模様・・・。
「なぁ兄貴、本当に大丈夫なのか? 無理して死んだら元も子もないぞ?」
こう言ったのはマッシュ。彼は心配そうに兄・エドガーの方を振り返りました。どうやら彼らはエドガーの頼みでここへ来たようです。言われたエドガーは重そうな機械を担ぎながら後ろを歩いてきます。
そのレベル、31。
普通ならば飛空艇居残り組の彼は、どうしても留守番が嫌だからレベルを上げたいというわけで、グロウエッグを装備した上でマッシュ、ロック、セリスを連れてきたのです。
言うまでもなくエドガー以外の3人はほぼ最強。普通の雑魚なら秒殺可。でも相手が恐竜となると話は別です。全力で戦わなくてはなりません。ですから3人にとって守らなければいけないエドガーは足手まとい。完全に邪魔なのです。「そこをなんとか!!!」と嘆願して一緒に来てもらったという負い目もあって、エドガーは足手まといにならないように十分気合を入れてきました。
おっと、そうこうしているうちに一行は大本命・ブラキオレイトスに遭遇!
それでは彼らの見事な戦いっぷりを拝見することにいたしましょう・・・。
† † †
「エドガー! お前はそこの木の陰からオートボウガンで援護してくれ!!」
マッシュと共に前衛に出たロックが叫んだ。エドガーは即座にロックの指示どおりの木陰に隠れる。その間に猛烈な勢いで間合いをつめてきたブラキオレイトスをセリスが後衛から魔法で牽制した。彼女はエドガーの護衛も兼ねて、後衛での魔法攻撃を任されたのだ。
「セリス! 兄貴を頼む!」
マッシュはそういって恐竜の方へ駆け出した。彼とロックが本気でかかれば、いくらエドガーが足手まといとはいえ、ブラキオレイトス1匹倒せないことはないだろう。
それに、セリスも後ろから援護してくれている。
楽勝だな!! とマッシュは思ってとなりにいるロックと連携して攻撃を仕掛けようとした。
ところがその瞬間。
シュッ!!
と金属的な音が響いた。それと同時にロックは何かが頬をかすめて行ったことに気づく。嫌な予感がしてそこに触れてみる。そして、生温かい感触にロックはぎょっとした。傷は深くないが出血している。突然のことで何が起こったのかわからなかったが、
「エドガー! ロックに当ててどうするの!?」
後ろの方でセリスがエドガーに言ったのが聞こえ、ようやく事情が飲み込めた。
エドガーだ。
彼のオートボウガンが狙いをはずしてロックに当たりかけてしまったのだ。当のボウガンの矢はそこら辺の木に突き刺さって全く役目を果たせていない。ブラキオレイトスの方も、自分を狙ったと思われる矢が関係のない木に刺さっているのを見てきょとんとしている。
「わ、悪いロック! 次はちゃんと狙うから!」
ロックを殺しかけてしまったエドガーは大慌てで謝った。他の3人は不審げな目を彼に向ける。それもあってか、エドガーはひどく自信を失ってしまった。
(バイオブラストなら確実にあたる・・・か?)
そう思案するエドガーを無視して3人は戦いに戻る。エドガーの傍は危険だと思って、マッシュはセリスと持ち場を交代した。
(兄貴・・・頼むからおとなしくしててくれ・・・。)
マッシュの想いを知ってかしらずか、エドガーはバイオブラストの噴射口を丁寧にあらためはじめた。マッシュの心に言いようもない不安がつのってくる・・・。
一方でロックとセリスとブラキオレイトスはかなり激しく戦っていた。恐竜の隙を見つけて2人で連携攻撃を行う。それによって恐竜が大きくひるんだ時、ついにエドガーが動いた。
「マッシュ、退け!!」
エドガーのものすごい剣幕に驚いて、ついついマッシュは言うとおりにしてしまった。
「食らえ!!! バイオブラスト!!!!」
毒ガス噴射!エドガーは確実にブラキオレイトスに猛毒を浴びせかけられたと思って、高笑いしようとした。そのとき。
折悪しく突風が吹いてきて、まっすぐにブラキオレイトスに向かっていた毒ガスが突然方向を変えた。つまり、風下にいたロックとセリスに直撃してしまったのだ(!)
「エドガー! 何で俺らを狙うんだよ!」
「ひどいわ! エドガー!」
「兄貴! 何してんだ!」
一勢に抗議され、誰が何を言ったのかわからなかったが、とにかくエドガーはさらに自信をなくした。もちろん彼は少しも仲間の役に立っていない。
マッシュは急いで犠牲になった2人に解毒治療を施した。
そして一言。
「もう機械はいいから兄貴は隠れてるだけにしてくれよ!!」
(なんてことだ・・・。今日こそ私のいいところを見せてやろうとおもったのに・・・。このままでは私は本当にお荷物ではないか!そんなことになってたまるか!私はフィガロ国王だぞ!よーし、こうなれば接近戦だっ!!)
機械はもういいと言われたエドガーだが、マッシュの言うことなどこれっぽっちも聞いていない。完全に自分の世界に入っている。
彼は最終兵器、かいてんのこぎりを取り出した。
エドガーの長考の間、すでに戦いを再開していた3人からはそれが見えない。エドガーは独りにやっと笑ってのこぎりの電源を入れ、自らも激しく回転しつつ3人+1匹のほうへ突進していった。ちなみにエドガー、仲間が恐竜の近くにいることなど考慮していなかった。マッシュはたまたまこの光景を目の端で捉え、急いで他の2人に警告しようとした。
・・・・・・した、のだが・・・。
「うわぁぁぁぁ!!!?」
「きゃぁぁぁぁ!!?」
手遅れだった。バイオブラスト用のガスマスクをつけたままのエドガーは、回転ジェイソンと化してロックとセリスを追い掛け回していたのだ!
追いかけられている2人は必死で逃げている。エドガーに殺されるなんて、何が何でも嫌だろう。また、自分の存在を完全に無視して仲間を追いかけているエドガーを、ブラキオレイトスは呆然と見ていることしか出来ない。
結局、本当に役立たずでしかないエドガーにキレて、マッシュは彼にストップをかけて動きを止めてしまった。
「マッシュ・・・ありがとう・・・。」
「助かったよ、マッシュ・・・。」
ようやく回転ジェイソンの恐怖から脱した2人は、肩で息をしながらもマッシュに心の底からお礼を言った。そして3人そろって身動きのとれないエドガーにつめよる。
「ハハハハハ・・・。まさかこんなことになるとはさすがの私も想像してなかったよ。」
恐怖心によってガタガタ震えながら大量の冷や汗をかいて今にも失神しそうな状態のエドガーは、極度に引きつった笑みを浮かべて言った。
恐いのは恐竜ではない。弟含む仲間3人だ。
やっとそのことに気づいたエドガー。だがもう遅い。
「雷を司る幻獣ラムウよ、此の者に裁きの雷を・・・サンダガ!!!」
3人は同時に雷の魔法を唱え、エドガーを丸こげにしてしまった。丸こげエドガーの横では、強力な電気を得たかいてんのこぎりが一層激しく虚しく回っている。ようやく3人は安堵のため息をついた。するとその時、今まで無視されていた怒りに堪えかねたのか、ブラキオレイトスは血も凍りつくようなおぞましいおたけびをあげた。
しかし歴戦のつわものたち。そのおたけびに驚くどころか、
「お前は黙ってろ!!!」
というマッシュの怒号を合図に、連続魔アルテマ×2(これはもちろんセリス)、ロックは瀕死でもないのにミラージュダイブ、そしてマッシュは夢幻闘舞をたてつづけに繰り出し、一瞬にしておたけびの主、ブラキオレイトスを闇に葬り去ってしまったのだ。
一件落着!!
† † †
こうして冒険者たちは無事に森を出て行きました。
それにしても、可哀想なのは彼らに出会った恐竜。エドガーの代わりに消されてしまったようなものなのですから。
いわば八つ当たり。
とにかく、この事件以来エドガーの機械は永久に封印され、黒こげになった彼自身の飛空艇居残り組が確定したのは言うまでもありませんね♪
それではエドガーに三闘神のご加護があることを祈りつつ・・・
■椿姫さんのあとがき■
題名のmachinery(マシーナリー)はエドガーの職業ということでつけてみました!
エドガーを主人公にしたらろくでもない話になってしまいました。申し訳ありません!
しかもロックとセリス脇役!?
こんないい加減なものしか書けませんが、また投稿させてください!! (06.2.28)
■御礼コメント■
投稿ありがとうございます。投稿があったのは1年ぶり、たまにしかないことなので喜びもひとしおです。
エドガー主人公という当サイトでは珍しい小説。笑わせて頂きました。弟マッシュにまで邪険にされてしまうエドガーって……。でも恐竜と戦うあたりってキャラにレベル差があったりして(私の場合は仲間にしたのが遅いロックがレベルが低かったです)、でもカッパグッズほしさに頑張って戦い、それを思い出してまた笑ってしまいました。
ギャグやコメディも好きなので、また投稿してくださいw お待ちしております。
タイトルロゴに使用した書体はBITMAP MANIA様のフリーフォント『BM gaia』、コピーライトに使用した書体は『BM wappen』(椿姫さんの名前は標準インストールされていた『HG丸ゴシックM-PRO』)です。
素材はコメディ調にするか悩んだのですが、カッコイイのがあったのでそちらでw 機械と恐竜(竜の素材としてあったものですが)……すばらしくイメージに合ったものが見つかりました^^ (06.2.28)
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